CEOメッセージ
「美意識」を軸とした経営で
持続的な成長とパーパスの 実現を目指します
変化の荒波を乗り越え、はじめに
ファイントゥデイグループは、2021年7月、株式会社資生堂のパーソナルケア事業から独立して創業し、目標とする「アジアNo.1のパーソナルケアカンパニー」に向け、自律したメーカーとしての経営体制を整えてきました。
創業時には営業やマーケティングなどの最小限の機能しか持っていませんでしたが、管理部門の強化に加え、国内・国外(ベトナム)の生産拠点の取得や、自前の研究開発施設「ファイントゥデイ ビューティーイノベーションセンター」の開所を経て、技術開発から生産、マーケティング、販売が一体となったビジネスシステムを運営しています。
ブランドに目を向ければ、「fino」の各地域での成長、初のオリジナルブランドである「+tmr(プラストゥモロー)」のローンチ・新ライン追加、「TSUBAKI」ブランドのフルリニューアル、更には2025年の「SENKA」におけるプレミアムラインの投入を実現するなど市場でのプレゼンスを高めるとともに、独立・自律した企業として、製品カテゴリー別・地域別の両面でバランスの取れた事業成長を実現することができました。
一方で、当社グループを取り巻く経営環境は激しく変化しています。地政学的な不確実性、生活者の嗜好の細分化、AIをはじめとする技術の急速な進歩など、さまざまな点で将来を予測することが難しい時代になっています。そのような時代においては、企業経営に当たり確固とした土台となる価値観を持つことの重要性が一層高まっていると考えています。
当社グループが大切にする「美意識」
当社グループにおいて、経営の土台となる価値観は「美意識」です。「美意識」とは、前身の資生堂時代から一貫してお客さまの肌に直接触れる製品を扱ってきた企業として脈々と受け継いできたものであり、私たちの考える「美意識」は、外面的な美だけを指すのではなく、内面的価値、情緒的価値、また誠実性や高潔性、思いやりといった、「心、身体、行動のあり方、更には社会全体の豊かさ」につながる価値を指しています。
我々は単なる日用品ではなく、「美意識」を礎とした「日用美品」をお届けする企業であると自認しており、それこそが他社との差別化要素になっていると考えています。一例として、オリジナルブランド「+tmr」は、「髪の本質に向き合うタンパク質に着目したケア」という新たなアプローチによるヘアケアを実現する高機能性に加え、それにより髪が仕上がった時のワクワクや、印象的なパッケージデザインなど、さまざまな要素によりお客さまの心を弾ませ、気持ちを明るくさせるような製品となっています。更に、ボトルには「リサイクルPET」を多く使用し地球環境にも配慮するなど、美意識を起点に、さまざまな視点から「豊かさ」に貢献しています。
私は、こうした製品開発をはじめ、事業運営・組織運営のあらゆる場面で「美意識」をグループの文化として一層強固に浸透させていくことを自身のミッションであると認識し、現場の社員とも頻繁に対話を重ねています。

美意識を体現するオリジナルブランド「+tmr(プラストゥモロー)」
DE&Iと人財育成を支える「美意識」と「自律的な課題解決ガバナンス」の掛け合わせ
美意識は、人財育成においても重要な基盤です。アジアの11の国・地域でビジネスを展開する当社グループにとって、各国・地域で異なる風土やニーズを尊重した事業運営は必要不可欠です。その中で我々の最大の強みは多様性のある人財であり、全ての人財が各々の能力を最大限に発揮することが、美意識を伴った企業価値創造の源泉となると考えています。
グループ全体では外国籍の社員が半数近くを占めており、年代や出身業界などの面でも、多様なバックグラウンドを持つ社員が在籍しています。そのような中では、「美意識」をグループ共通、すなわちグローバルな価値観と定めつつ、各地の社員がローカルなニーズを自律的に汲み取って適応していく「グローカル」な経営が重要だと考えています。互いの多様性を認め合い、全ての人財が各々の能力を最大限に発揮することが、当社グループの企業価値創造の源泉であり、そのために、「DE&I(多様性、公平性、包摂性)」の取り組みと、それを組織として実効的に機能させるための自律的な課題解決能力が非常に重要であると考えています。

入社式では、「美しさの本質に向き合うセッション」として、新入社員と経営陣それぞれが大切にしている思いや価値観を表す草花を手に、各々が考える美しさを双方向で語り合い、持ち寄った草花を一つの花瓶に生けていくというユニークなイベントを実施。

最後には、ファイントゥデイグループの多様な美しさを表現したフラワーアレンジメントが完成。
自律的に課題解決を実行できる組織の第一歩として、私は、「課題指摘に咎めなし」という方針を打ち出し、事あるごとに社員に伝えています。高い心理的安全性を背景に、トップダウンに頼らないミドルアップ・ボトムアップによる課題の発見・解決を遂行できる組織を構築する。私はこれを「自律的な課題解決ガバナンス」と呼んでおり、業績を含め優れた企業の特徴であると考えています。この「自律的な課題解決ガバナンス」が「美意識」と歯車のように組み合わさって機能することで、自然な形で社員同士が多様な価値観を受容し合い、DE&Iが着実に前進します。これにより、さまざまな知見を持った人財の育成にもつながると信じています。

オープンなカルチャーのもと、「美意識」と「自律的な課題解決ガバナンス」の歯車がうまく噛み合うような人事制度によって、人財育成とDE&Iを強力に推進。
「美意識」を基盤とした、事業運営とサステナビリティ推進の「両輪経営」
「美意識」を土台に、あらゆるステークホルダーに豊かさを届けることを目指す当社グループは、事業運営そのものがサステナビリティ推進と非常に親和性が高いとも言えます。そういった背景のもと、私たちは事業運営とサステナビリティ推進の取り組みを経営の両輪としています。
創業後間もなく制定した「世界中の誰もが、素晴らしい一日を紡ぎ、いつまでも美しく、豊かな人生を送れるようにすること」というパーパスの実現に向け、その「両輪経営」により、さまざまなステークホルダー、つまりパーパスで掲げる「世界中の誰も」からの信頼と共感を得ていきたいと考えています。
当社グループはこれまで、短期間のうちにサステナビリティ推進の取り組みを着実に進めてきました。2024年には、EcoVadis※1の評価上位5%に贈られるゴールドメダルを2年連続で受賞(2024年は上位3%にランクイン)するとともに、パッケージにおける積極的な環境対応が評価され、「2024日本パッケージングコンテスト※2」において、「+tmr」が「トイレタリー包装部門賞」を受賞するなど、外部から高い評価を得ることができました。また、2023年に開示したTCFDレポートに加え、2025年にはTNFDレポートの開示も実現するなど、情報開示の面でも進歩を果たすことができました。
2025年3月には、あらゆるステークホルダーに持続的に価値を提供していくためのロードマップとしてマテリアリティ「Fine Today & Tomorrow」を定めるとともに、その実現に向けた中長期目標を整理しました。目標達成に向け、引き続き「両輪経営」を力強く推進していきます。
これまで述べてきたように、「美意識」こそが、当社グループの独自性を生み出し、日用品業界のマスセグメント製品が陥りがちな価格競争とは一線を画す差別化要素になるだけでなく、あらゆるステークホルダーからの共感・信頼の獲得に結び付き、有形無形の企業価値につながると信じています。
これからも、多様性のある人財がイチガンとなって、100年先の世代にも敬愛される企業グループとなるべく、地球と事業のサステナビリティに資する取り組みを力強く推進していきます。

- 185カ国以上、15万社以上が登録する世界最大のサステナビリティ評価機関(2025年9月時点)。
- 時代と社会の要請に対応した、生活文化に優れたパッケージおよびその技術の開発普及に資することを目的に、公益社団法人日本包装技術協会の主催で毎年開催されているコンテスト。適正包装、環境適合性、保護・保全性をはじめ11の項目を目安に審査が行われる。
株式会社ファイントゥデイホールディングス
代表取締役 CEO
